愛する人へ 父さん、母さん、ごめんなさい。 最後までそばにいられず、ごめんなさい。 母さん、産んでくれてありがとう。 生死をかけるほどの苦痛の末、産んでくれた母さん。 辛いとき、悲しいとき、そっと抱きしめてくれた母さん。 ありがとう。 父さん、育ててくれて。 生まれたばかりの私に、全てを放り出しそうな満面の笑顔で 抱えきれないほどの喜びと夢を披露してくれた父さん。 遊びながら、お手伝いの中で、いろんな事を教わりましたね。 叱られて、泣いたこともあったけど。 父さんの背中は温かかった。 忘れません。 あなた方と暮らした一日一日を。 世界一幸せでした。 お二人の笑顔が私をとても安らかにしました。 だから、今、私は苦しく、つらいのです。 悲しみに沈むあなたがたを見るのが。 そんな光景、見たくありません。 あふれる涙に流されるあなたを。 涙を拭ってください。 あなたの汗を見たいのです。 眼を開けてください。 顔をあげてください。 立ち上がってください。 手を前へ伸ばしてください。 みんな待っています、あなた方を。 あなた方は一人ではありません。 大勢の仲間がいます。 あなたを必要としている多くの人がそこにいます。 私の載っている思い出帳に、新しい想い出を重ねて下さい。 これからずっと、あなた方を見守っていく私からのお願いです。 我が子よ、お前を残していくことを許しておくれ。 お前の成長をそばで見守れぬ私を許しておくれ。 私は行かねばなりません、お前を残して。 私の望んだことでないのだ。。 運命の神の定めたこと。 大きな自然の摂理。 受け入れるしかないだ。 この身を引き裂かれるよりも、ずっとずっと辛いこと。 お前を残してゆかねばならぬ私の心をわかっておくれ。 残されるお前の寂しさは、私が一番よく知っているよ。 誰よりもよくわかっているよ。 できるなら、あらん限りの声を出して、 「なぜ私が、なぜこの子が」と運命の神に叫びたい。 だが、答えは返ってこないだろう。 これが人生なのだから。 運命の神がなぜ私を選び、お前を選んだのか。 その答えは、お前が見つけておくれ。 お前の前には茨の道があるかもしれない。 だが、ひるまないでほしい。 まっすぐ、突き進んでほしい。 お前の求める答えがきっとその先にある。 私は信じているよ。 お前がそこにたどり着くことを。 答えを見つけること。 我が子よ。 今は我慢しなくてもいいんだよ。 悲しみを隠さなくてもいいんだよ。 たくさん涙を流しなさい。 思いっきり泣き叫びなさい。 その胸にある全てをはき出しなさい。 運命の神を、自然を、呪うのもいいだよ。 でも、涙を枯らしてはいけません。 喜びの涙まで無くしてはいけません。 その日が来るまで大切に取っておきなさい。 私との想い出と一緒に。 愛した人へ 私が愛した人へ。 私は今あなたのそばにはいない。 泣いてください。 泣き叫んでください。 そして、私をおくってください。 暖かい涙の川の流れに乗って、私は行きます。 たとえ、この身は冷たい水に沈んでいても、 あなたの温かい心に抱かれて、旅立てます。 だから、思いっきり泣き叫んでください。 私の骸は、 あるいは、水底に沈み、 あるいは、土塊の中に まみれるかもしれません。 いずれ、自然の営みの中に とけ込んでしまうかもしれません。 でも、私の心は、魂は、残ります。 ずっと見守ります、空から。 あなたの笑顔を見守ります。 あなたの笑顔こそが私の喜び、安心なのですから。 新しい世界を作ってください。 新しい仲間と歩んでください。 振り向かないでください。 前だけを見て生きてください。 みんなが待っています。 新しい仲間が待っています。 私のことは、懐かしい想い出として あなたの心に少しだけ残してください。 あとは、いいんです。 私にも仲間がいますから。 安心していいんです。