幼き頃
幼き頃、いろんな夢を見ていたような気がする。
枕の上で見る夢ではない。
まぶたの上で見る夢でもない。
途方もない夢であったかもしれない。
だが、いろんな夢を見ていたような気がする。
友達と野山を掛け、小川を走り、浜辺に寝転んだ。
鳥の声を聞き、川面のひかりを受け、海風に身をまかせた。
蛍のひかりを追い、月と星の歌をきき、夕日を楽しんだ。
幼き頃、果てしない夢を見ていた。
科学者になりロケットを飛ばすんだ。
バスの運転手になり、村から町へ、町から村へ走るんだ。
パン屋さんになって、おいしいパンを一杯作るの。
お医者さんになって、難しい病気を治すんだ。
山いっぱいに花を咲かせるんだ。
海いっぱいに船を浮かべるの。
大きな大きな工場をたくさん造るの。
おいしいジュースをたくさん作るんだ。
サッカー選手になって、オリンピックに出るんだ。
プロ野球のスター選手になって、インタビュー受けるぞ。
…………
幼き頃、果てしない夢を見ていた。
朝日がさして、夕日が消えるまで、
私は、いろんな夢を見ていた気がする。
どの夢も、きれいな夢だった気がする。
どの夢も、はてしない、途方もない夢だった気がする。
そして、今。
今、私は夢を見ているだろうか。
………ような気がする。
あの幼子たちは、いま、やはり夢を見ているのだろうか。
いろんな夢を見ているのだろうか。
果てしない、とほうもない夢を見ているのだろうか。
たぶん、………。
いや、きっと………。